根拠はない

マイティースイズデリシャス

食べる、丸山隆平さん

わたしは自分で食べることも好きですが、人が食べているところを見ることはもっと好きです。
ですが、人の食事をしているところを見つめるのはお行儀がいいとは言えませんし、そういったところをジッと見られるのは気恥ずかしく居心地が悪いことですからするべきではありません。

グルメ番組は、普段なかなかできない人の食事シーンをじっとりと見つめるということが可能になる素晴らしい機会なのです。

録画をスローモーションにして再生することも可能ですし、好きなところで一時停止することもできます。今食べているものが明日のこの人を作り、昨日この人が食べたものが今この人を動かしているのだと思うと神聖な気持ちになります。録画を一時停止して拝むというのもオツなものです。

究極のバタートーストを試食する丸山隆平さん。背中を丸め小さくなって両手で持った一枚のトーストを目を細めて召し上がり満足そうに「ふぅ」と息をつくところまで含めて、森の小さな仲間たちとの日々のハッピーライフが垣間見えるようでした。

また、ハワイのレストランでお酒とともにステーキを召し上がる丸山隆平さん。鼻の高さがより引き立って見える斜めの角度から映される、アメリカらしい赤身のステーキに何口かにわけて齧りつく顎の動き、寄せた眉と眉間のしわ。咀嚼しているときの頬や口元、喉の立体的な動き。3Dで上映してくれる映画館はないものでしょうか。

食事はその人物を生かすための行為で、この行為があるからこそもちろんこの方は生きているわけです。今まで生きてきた36年間、毎日食べてきたものからできた血液が走る血管が浮く首や腕を、今、見ているのだと思うと、わたしもともに走り出したくなってしまうのです。